《MUMEI》
上の空
洋子さんの車に乗せられて、俊彦は行ってしまった。

(だ、大丈夫…かなぁ)


「ママ、遅れるよ」

「あ、うん…」


(しっかりしなきゃ)


私は、子供達と一緒に千葉にある実家に向かった。


「ただいま…」

「おかえり〜!蝶子ちゃんと子供達!
ん? 約一名いないな」


父は、玄関から出てきて周辺を見回した。


私は父に、俊彦が来れない事を説明した。


「そ〜かそ〜か! 残念だったな!」


父は心から嬉しそうだった。


「ちょっと太郎さん、蝶子ちゃんは寂しいんだから…ねぇ?」


(寂しい…)


華江さんに言われて、私は初めて気付いた。


結婚してから、俊彦が二泊三日も側にいないなど、あり得ない事だった。


「ママ、…寂しいの?」×3

子供達が不安げに私を見つめた。


「だ、大丈夫よ」


私は慌てて笑顔を作った。

しかし、その後も私は上の空で…


「痛っ…」


久しぶりに包丁で指を切ってしまった。


そんな私を、華江さんや子供達、それに、子供達の兄のような存在の友君は心配そうに見つめていた。


(こんなんじゃ、ダメよね)

私は反省しながら眠りについた。

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