《MUMEI》

タマを判断する前に

毛が降ってきた。


有り得ない質量の、毛だ。


トイレで毛に塗れた明石珠緒を見て、支配欲が止まらなかった。

俺は同時に二つのタマを手に入れた。

しかし、手に入れたかったものはこれなのか、俺には分からない。



しかし、手が足が止まらない。
呪詛でもかけられたのか、ひたすらに泣き叫ぶ明石珠緒を叩き辱め、眺めながら答えを模索した。

夜中まで考え込む日もあった。
何故、明石珠緒を選んだのだろう……

「ひむろさま……ごめんなさい……」

タマの寝顔を覗いてたら寝言が謝罪だった。

毛が伸びる体質のせいか睫毛の量や長さはかなりのものだ。
目がタマ(猫)のように大きくて、笑うと血色の良い弾力のありそうな唇が綺麗に持ち上がる。

当初、伸びる毛は硬いのだとばかり思っていたら産毛のように柔らかかった。
何処の毛も同じ触り心地で驚く。
昔、滅多に入る事を許されなかった父の書斎に敷いてあった極上の毛皮を思い出させた。

だからなのか、つい自分の手でタマの毛を刈ってしまう。

それだけか?



タマ(猫)は俺から逃げ出した。だから新しいタマと旧タマにGPS機能付き首輪を付けた。

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