《MUMEI》
地獄耳(俊彦視点)
「あの、先生…さっきの、蝶子…さんって誰ですか?」


一人の演劇部員が洋子さんに質問した。


(何?蝶子だと?)


俺の耳は蝶子という言葉に関しては、過剰に反応する。


理由は簡単だ。


俺の愛する大切な大切な可愛くて美脚な…


「俊彦さんの奥さんよ」


(そうそう、俺の奥さん×2)


「今、子供達と実家に帰ってるの」


「待て待て待て!」


俺は涙目の柊を引きずりながら、洋子さんの所に戻った。


「違うから!離婚とか離婚の危機じゃないから!」


「そんな事言ってませんよ」


「普通は誤解されるだろ、見ろ!」


「…あ〜」


その時、俺の言葉を聞いた洋子さん以外の人間は、


『離婚じゃないんだ〜』


という顔をしていた。


「お盆はお義父さん達が煩いからいつも帰ってるの!
洋子さんがどうしてもって言うから、泣く泣く来たんだよ!」


「子供達には感謝されましたけど」


「グッ!」


俺は精神的にダメージを受けた。


「しかも、三人全員に」


洋子さんは更に追い討ちをかけた。


その時俺の脳内に再び●ナドナが流れた気がした。

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