《MUMEI》 早朝出発「おはようございます」 「おはよう、蝶子ちゃん」 華江さんは既にゼリーを保冷バックに入れ、更に保冷剤も入れていた。 「遠くに行くんですか?」 何気なく言った私に、華江さんは笑顔で信じられない事を言った。 「だって、吾妻高校まで、結構あるでしょ?」 「…この辺にも、吾妻高校あるんですか?」 「無いわよ」 「…あの? どういう事、…ですか?」 私は意味がわからず混乱していた。 「だから、これ持って俊彦君の所に行きなさいって言ってるの!」 「でも…」 (私は、子供達と…) 「大丈夫、壱子ちゃんの許可は得てるから」 迷う私に華江さんは笑顔で告げた。 「壱子の?」 「だって…ママ、さびしそうだし、…ママ、けがしたら、…やだ」 台所の扉を開けながら、壱子は私の足にしがみついてきた。 「だから、ママ、いってもいいよ」 「そうそう。こっちは私達に任せて…ね? 帰りもちゃんと家まで送るから、安心して」 そして私は 「…行ってきます」 二人に頭を下げて、伊東家を出発した。 置きっぱなしの携帯も、忘れずに持った。 前へ |次へ |
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