《MUMEI》 ナンパそして私は、慎さんと祐希(ゆうき)さんのアドバイス通りタクシーで吾妻高校に向かった。 ちなみに、私が話しかけた女性は、慎さんの妻の志穂(しほ)さんだった。 (素敵な三人だったな…) 私は優しく親切な三人に、心から感謝した。 『目立ちたく無かったら、高校の向かい側に大型スーパーがあるから、そこの駐車場でおろしてもらえばいいよ』 私は慎さんのアドバイスに従って、タクシーを降りた。 『軽音楽部には気を付けな。あんた、可愛いから』 そう祐希さんは言っていたが、私は実は信じていなかった。 私は今年二十九だし、夫も子供もいる。 こんな事は起こらないと思っていたのだ。 (嘘…) しかし、現実に私は… 「お姉さん、どうしたの?」 「うちの学校に用事?」 「案内しようか?」 「それより遊ばない?」 どう考えても、ナンパされていた。 (な、何で!?) 明らかに軽音楽部とわかる楽器を抱えた派手な集団に囲まれ、私は軽くパニックに陥っていた。 (と、とりあえず…) 私は、ゆっくりと口を開いた。 前へ |次へ |
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