《MUMEI》 19歳から20歳瞳子さんの二十歳の祝賀会に七生と招待されたことを北条さんに七生が話したところ、服を貸して頂けることになった。 申し訳無い……。 俺は白いスーツを来て黒に近い紅色のシャツを着ている。 いつもと違う堅苦しさに腹痛が起きそうだ。 「じろー!」 七生が迎えに来てくれた。 当初、自転車で行く気だったのを憂いて北条さんが送ってくれるそうだ。 やっぱり申し訳無い。 「七生ホストみたい……。しかもNo.2。」 国雄さんの次くらいで太鼓持ちしてそう。 「なんだそれは新手の嫌がらせか?」 七生は難しい顔をする。 「それだけ似合っているということだよ」 テカりのある灰のスーツがそれはもうしっくりきていた。 くせっ毛も上手いこと後ろに流している。 「二郎は天使みたいだな。」 は、恥ずかしい言葉を言いよるな……! 「行こうか……」 目を合わせないように避けて行こうとしたら、両手を結ばれた。 「なっ、なになになに…………」 鼻先が付きそうなくらい見られた。 玄関だよ?キスは駄目だ駄目だ…… 左手が空いたと思ったら指先が瞼に触れた、過敏になって、がっちり目を閉じてしまう。 七生の手は俺の前髪を軽く掻き上げられた。 「うん、額出した方がセクチィだな。」 満足気な七生は耳に後れ毛を掛けてくれた。 その不器用な手つきにどきどきしてしまう。 「…………あほ」 目を開くと予想通りの満開笑顔だった。 自分の阿呆な期待にうんざりしてしまう。『天使』なんて言うより恥ずかしい。 前へ |次へ |
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