《MUMEI》
貢に服着せて貰ってビルを出た。まだまだ躰が震えてて…、
恥ずかしいなんて言ってられず俺は貢の腕にしがみついたまま。
日高は俺らよりちょっと後ろから着いてくる。
俺に余裕のあるところ見せたくて貢は合コンに送り出したらしい。でもやっぱり気が気じゃなくて、あのビルの近くのスタバでコーヒー飲んでるところに日高から電話があって急いで来てくれた。
「貢があんなに強いなんて知らなかった…」
多分ボクサーな城を簡単に倒してしまった事実にひたすら驚くばかり、まだ正直信じられない。
「うん…、向こう居たときまでボクシングやってたから…」
「――マジかよ…」
どうりで筋肉とか逞しい訳だ。体育の時間も何かにつけ飛び抜けているし…。
「関西弁は?貢って
信州じゃなかったっけ」
「長野は半年しか住んでない、親の転勤で長野行く前まで大阪に住んでた…」
「……―――」
「―――…」
貢は殆ど自分自身の事を語らない。
「俺なんも聞いてなかった、…ちょっと…
寂しい」
腕からするりと手を離し俺は立ち止まる。
「さ、佐伯?ま、まあ落ち着け!
長沢!あのさあ」
「―――聖ちゃん…、」
「知りたいよ…、全部知りたい、イヤな事も知りたい、」
もう涙腺緩みすぎ、
また涙が溢れだした。
ギュッと抱き寄せられ、俺も貢の背中にキュッとしがみつく。
日高が小さい声で皆見てるって何度も繰り返すけど、もう何もかまってらんなかった。
耳元に、嫌わないでって吹き込まれ
なるわけないって小さく答える。
するとグイッと肩を抱かれ、足速にラブホの前まで連れて行かれ…
日高は小さく、佐伯頼んだぞって貢に言って、そこで別れた。
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