《MUMEI》
俊彦暴走
俊彦は最初、体育館の隅で座り込んでいた。


高山君と田中君の声に、かなりゆっくり、時間をかけてふり返った俊彦の目の下にはクマがあり


「ちょ…蝶子〜!!」


俊彦は、叫びながらダッシュでこっちに向かって突進してきた。


「ちょっ!ちょっと待って俊彦!」


(場所を考えてよ!)


私は、俊彦をなだめようとしたが…


「待〜て〜る〜か〜!」


ガシッ!


俊彦が私の腕を掴む。


「待っ…」

「…待たない!」


ギュッ!


そして、結局私は俊彦に、…抱きしめられてしまった。


「皆、…見てるよ。離して、ね?」

「嫌だ。蝶子がいなくて寂しかったから、離れたくない」

「ほんのちょっと離れただけでしょ?」

「蝶子は寂しくなかったの?」


(そりゃ…少し、は…寂しかったけど)


俊彦の言葉に、私は自分の顔が赤くなるのがわかり、うつ向いた。


「あ、の…ゼリー、配ってもらえます?」


俊彦に抱きしめられ、身動きがとれない私は仕方なく、高山君と田中君にお願いする事にした。


「あ、…はい」


(絶対、呆れられた…)


田中君は、私から思いきり目をそらした。

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