《MUMEI》
出会い
画廊の受付で勤務する光は、仕事柄多くの人と接することはない。もちろん仕事絡みは別として、客に接することは少ない。その日も客はいなかった。
光が書類に目を落としていた時、一人の男が入って来た。光に気が付くと、「すいません、雨宿りさせてもらっていいですか?」見ると男は随分濡れている。光は「どうぞ」と言って、タオルを差し出した。「あ、ありがとう」男はタオルを受け取った。
外は光が知らないうちに雨が降っていた。「いつの間に…」呟くように言った光に男は「急に降り出したんですよ。」その雨が心地いいと言わんばかりに爽やかに返した。
しばらく二人並んで外を眺めていたが、光が気まずさを感じ、その場を離れお茶を入れてきた。「よかったらどうぞ。」男は「雨宿りにそんな気を遣わないで下さい。」と恐縮した。「風邪、ひきますから」初めて光は微笑んだ。男はその笑顔に引き付けられた。「どうもありがとう」男もその時初めてまじまじと光を見た。書類に目を落としていた光は視線に気づいて目を男に向けた。「何か?」男は視線をはずしながら「多いですか?雨宿り。」と聞いた。「少ないですよ、ここ目立ちませんから。」

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