《MUMEI》

「あら、あんた達おかえりなさい!」
「た、ただいま…」
「おばさんただいま」
玄関の前で犬と戯れていたお袋。今私服だから店には親父が入っているのか。
ちょっと気まずい…、俺はお袋と目線を合わせずに玄関のドアノブに手をかける。
「あんた達たまには下の広いお風呂入んなさい?、今お湯張ってるから一緒にすましちゃいなさいな」
「――――!」
「はい!いただきます」
力強い貢の返事。思わずお袋を見ると貢をみながらニコニコ笑ってる。
俺は無言でドアを開けると
「あ、貢君、お風呂上がってからでいいからお父さんの晩酌付き合ってあげて?
あの人大阪の大学に行ってたから貢君と話したいって大騒ぎなのよ」
……!!
「そうなんですか、わかりました」
「な!貢!お前大阪出身だってお袋には話してたのかよ!」
「え?……う、うん…まあ…」
「何言ってんの!貢君は私の息子になるんだから当たり前でしょ!ぜ〜んぶ!ぜ〜んぶ教えて貰ってるわよ」
貢を見るとちょっと気まずそうに、
「聞き出された…」
と小さく言った。

「――はあ……」
おばちゃんパワーで詮索された訳か。つかいつの間に…。
「そのかわり聖の小さい頃の事み〜んな教えてあげたんだから!
小学一年までオネショしてた事とか、ボサっと歩いててマンホールに落ちた事とか、あ〜写真も全部見せてあげたし」
「なっ!////」

貢は頭をかきながら照れ笑い。お袋も何だか楽しくなった様で一緒に家の中に入ってきた。

自室から着替えを持ってリビングに行くと3人でビールなんか飲んでいた。
「親父店は?」
「ああ、バイトが確りしてきたから任せてる」
「貢、ビール飲めないんじゃ…」
「うん、ずっと今まで禁酒してたんだけどね、今から解禁しちゃおうかなって」
そう言いながらグラスのビールを一気に飲み干し、本当にうまそうにはあ〜と息をついた。

………―――


これが本当の……貢

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