《MUMEI》

 
「さ、できたわよ。
美香、美鈴、運ぶの手伝ってちょうだい」


 出来立てのカレーを美香と美鈴が交互にテーブルの上に並べ始める。

 最後に水の入ったコップを運んで来た美佐代が、


「あ、違う違う。
パパのカレーはこれよ」

と皿のレイアウトに修正を施した。


「どれだっていいじゃないか。
何が違うっていうんだ?」


「肉の量」


「なるほど、少ない」



 その時、テレビからクイズ・ディフィカルトのオープニングテーマが流れ始めた。
美香が素早く音量をふた目盛り分上げる。 

 クイズ・ディフィカルトはタイトルから察しできる通り、一般的とは言えないほど難易度の高い問題が出題されるクイズ番組だ。

 誰にでも分かるようなクイズを芸人がボケ倒す内容の番組が多い中、このクイズ・ディフィカルトの構成は逆に斬新で視聴者からの人気が高まっていたのだった。

 そして、何よりの番組の売り物は一般公募からなる回答者の個性にあった。
 出題される内容が内容だけに回答者も東大、早稲田、慶応を始め有名大学出身者ばかりで、問題が解けなかった時の大袈裟に悔しがる仕草や、異様なほど正答率にこだわる執念の表情が見る者を惹きつけ、時に笑いも誘った。

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