《MUMEI》

「―――」
「怒ってるの?」
「別に…」
背中を洗って貰い、シャワーをかけられる。
お返しに今度は俺が貢の背中を洗いだす。
俺と違い大人の男の背中で…、ちょっと悔しくて力任せにゴシゴシ洗う。

「痛いって」

「痛くしてんの」

「ヤだよ」

「いーの」

「――――!」

振り向きざまに抱きすくめられ唇が深く合わさってきた。
背中を撫でられ、胸に手の平が合わさる。
平で露骨に乳首を転がされ俺は貢にしがみついた。
「何でも聞いて?何も隠すつもりないから」
「わかってる、わかってるけど!」

「けど?」

……拗ねただけ


甘えてるだけ

大好きなだけ

好き過ぎる

好き過ぎておかしくなりそう

「俺の事…どのくらい好き?」

貢はジッと俺を見つめて、そして眼を少し細めた
そして俺の濡れた前髪を掻き分け、額にキスをしてくる。
「聖は俺のこの世の全てだよ、他の事なんか一切比べモノにならない…

俺は聖の為なら鬼にも蛇にもなれる、
聖が望むならムシケラ同然にまで堕ちる事さえいとわない…

俺がここまで入れ込んだ人間は初めてだよ、
後にも先にも俺は…」

――その先は俺が唇を塞いだから続かなかった。
何度も角度をかえ、
体制を変えてキスをいっぱいして。


凄く、凄く恥ずかしかったけど、

実は貢が初恋の相手だって言ったら、今まで見たこともない笑顔を俺にくれた。




本当は遥ちゃんが初恋なんだけど…
こん位の嘘はありだろう。


風呂を出ると親父はすでに夢の中。ソファに寄りかかりながら豪快にいびきをかいてる。
「貢君ごめんね、また今度付き合ってやってくれる?
お父さん貢君が優しそうな子で安心しちゃったみたい、ほら、上の長男はいい加減で性格ボロボロで恋人一回も連れてこないもんだから」
…陸ちゃん…
不在の間に勝手な事言われてるよ…
「はい、俺で良ければ何時でもお付きあいします、ただ、聖ちゃんが俺に甘えたい時だけは無理なんですけど」
「は?何言って!!」
「そりゃそうよ!息子を何より優先してやって?
この子は本当にスッゴい甘えん坊さんなのよ、ほら、小学3年まで私のおっぱいを…」
「お袋止めろよ〜!!」

必死になってお袋の先の台詞を制止する。


クスクス嬉しいそうに笑う貢。

何だか見たこともない位嬉しそうなお袋。

ひたすら高イビキな親父。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
ケータイ小説サイト!
(C)無銘文庫