《MUMEI》

「映画は何見る?私ねー、邦画がいいな。」

「はあ?邦画は今クッセー純愛しかないだろ!」

先輩達は言い争い始めた。


「まあまあ、ここは二対二に分かれればいいでしょ」

白戸が副部長の腕を組む。

「……絶対、嫌だよ!白戸と二人でなんて映画観ないし!」

白戸は腕を払われた。


「いーじゃん二人で、なあ。弥一?」

世喜先輩が顔を覗き込む。




「……俺、アニメがいいです……。」


  「「………………」」

邦画とアクションの間を取っていたらしく、俺の意見が採用された。


世喜先輩をスクリーンの光で見るのは緊張した。隣を確保してひそかに嬉しい。

喉も自然と渇く……飲み物の減りが早い。
探ってみるが飲み物が見当たらない、先輩が俺の飲み物を飲んでいた……
先輩が気付かず元に戻す。

とりあえず、手に取ってみたがこれはもしかしてもしかしなくても間接ちゅー…………
キスはしてるけど、外では無いし、そもそも間接だからカウントされないんじゃないかとか……

いや、駄目だ弥一。映画館でちゅーは不純だぞ!


「弥一どうした、熱か?」

世喜先輩が額を合わせてきた。


   「ヒィッ……!」

皆が笑うシーンで一人悲鳴をあげてしまった……。


「弥一?」

世喜先輩が人差し指で頬を突く。
……したい……かも。


「ヤーッ触らないで変態!」

なんて、俺は変態なんだ!
勢いづいて、逃げ出してしまう。

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