《MUMEI》

7人乗りの黒のワゴンの横に北条さんが七生張りの人懐こい笑顔で待っていた。

「いいなあ、二郎君細いからピッタリしたの似合うなあ。純真無垢だね!
さ、乗って乗って!」

北条さんは後部座席を開けてくれた。
にしても、この親子の褒め方は恥ずかしいな……。


「あ……神部」

先に神部が座っていた。
神戸は横目で俺を見ると無言で浅く会釈した。


神戸は黒の落ち着いたスーツを着ていて、俺達より遥かに地味めだ。


「……父さんの見立ては相変わらずだな。」

ぽつりと神部が漏らしたのを聞き逃さなかった。

もしや、俺達浮いてたりしないよな……?


「おーちゃん、何かプレゼント持ってきた?」

神部に七生が話し掛けた。


「おーちゃんは瞳子ちゃんの誕生日当日に届くように送ったんだもんねー?」

運転しながら北条さんは語りかけた。


「……父さん!」

神部が珍しく顔を赤らめて照れ隠しなのか窓を見ていた。
そうか、瞳子さんを好きなのかもしれない。

なんか恋してるかんじが…………

「カワイイな」

つい、漏らしてしまった本音に神部は睨み付けた。

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