《MUMEI》
別行動
「はーい!、じゃあ、今日はここまで!」

「お疲れさまでした〜」


洋子さんの声は相変わらず元気いっぱいだったが、部員達は疲労がピークのようだった。


唯一…


「お疲れさま〜!」


劇の主役の、志貴(しき)ちゃんを除いては。


(すごいなぁ…)


志貴ちゃんは美人で、演技力も抜群で、一度もセリフを間違えていなかった。


「蝶子? どうしたの? 行くよ」

「あ、うん」


私は隣の俊彦に言われ、体育館を出た。


…の、だが。


「ちょ、どこ行くの? 蝶子はこっちでしょ」

「…え? だって」


(合宿所、こっちなのに?)

私は、普通に皆と同じように合宿所に泊まるつもりだった。


俊彦に会いたかったが、…別に、


「これから、俺達の二人だけの甘い時間の始まり…だろ?」

「そ、そういうつもりで来たわけじゃ…」


私は、本当にそういうつもりでは無かった。


ただ、会いたくて。


それだけで来てしまったのだ。


「俺は、そういうつもりだよ。…合宿所でしてもいいなら残るけど」

「それはイヤ!」

「じゃあ、別行動決定だよね!」


そして、俊彦は皆に挨拶して、私の肩を抱いた。

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