《MUMEI》

氷室千石は、その業界では伝説的なサドだ。

穏やかな紳士の面を被った狂人だと理解している。
彼に育てられた自分も恐ろしいくらい似ていると自覚しているが……


今回の考え方は違う、父と縁を切る事も厭わない程にタマを愛している。

しかし父と決別すれば退学になり、帰る家も諸事情により無い俺はタマを手に入れることもままならないだろう。




だから、堪えよう今は。
タマを父の苦手な少女に見立て、背中をいたぶられせよう…………
にしても苛々する。

タマが俺以外にイイ苦悶をするだなんて……ついつい震えるタマの頭を踏みにじり、俺に見せる怯えた顔に安堵してしまう。





父さんも何か気付いたのかもしれない。
俺は毒に気付き、父の代わりに毒味をして解毒剤をこっそり飲み毒を回った演技をして、誕生日会を中止にしたかったのだが父さんはタマに毒を喰わせた。


止めたかったが毒に気付いているのに今更わざとらしい演技なんて出せない。



………………そして、タマが毒により悶える姿を純粋に見たかった。

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