《MUMEI》
呪縛の愛
昔からの言い伝え。
それは、許嫁を一度決めたら一生守り抜く事。
ここまでは普通だった。

しかし、俺、竹屋紀和はその言い伝えがアホらしくて大嫌いだった。

考えてもみろ。俺はまだ高校生。自由に生きたい年頃だ。そんな言い伝えが無くても、ちゃんと人を愛する事が出来る。(失敗したら話は別だが)


親父からそんな話されたって…俺は学生。いくら言い伝えを守れ と言われても、急には出来ないのさ。


とある放課後。
「ちょっと、紀和!聞いてるの!?」

母親からの頼まれで付き合っている、同じクラスの奈良月 翔だ。俺より背が低く、赤毛の長髪だ。

「あぁ?何度も聞こえるよ。そんなでかい声出すなよ…みっともない」

「なんだって?アタシの言う事聞けないのかい!」

放課後なので、ほとんど人は少ない。俺と翔は大抵残っているほうだ。

「はぁ…アタシ達、進路はどうするつもりなの?」
「言い伝えの通りお前を守っていくさ」

その時、翔はぱあっと明るい表情を出した。制服が少し揺れている。

「やったあ!嬉しい、紀和!」
「うわぁ!ちょっと引っ付くな!」
俺は思わずすざる。

「ふう…熱い熱い」
「なんだよ大悟」
俺の親友。三倉大悟だ。
なんていうか、外見は賢く見えるけど、中身は餓鬼大将みたいな性格だ。

「翔も来るか?」
「え?何?」
「忘年会!」

ニヤリと笑って話す所がますます餓鬼大将だ。

「俺達だけで?」
「うん!いいだろ!なぁなぁ」

俺は腕組みしながら悩む。
「いやぁ…いいけど、前みたいに罰ゲームやらされるのは勘弁だからな!」

去年の忘年会で、俺達はトランプ大会をしたんだけど、俺は一人…寒い外を町内一周するという罰ゲームをやられたのだ。


「ハハハ!そんなの無し無し!今年は自由にやろうや!」

隣に居る翔は机に肘を置いて呆れ顔だ。

「ハァ…まぁいいけどねー」
(二人きりで過ごしたかったのに!)

「“許せん…”」
その時、俺ではない誰かの声が聞こえた。

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