《MUMEI》

かつて、俺がいたぶった奴隷にこれほどまでに口から汚らしく唾液を漏らして痙攣し、悶絶しているのはいただろうか?

タマは四つん這いになってまるで、動物のように賎しく、いやらしい醜態を晒す……蔑む俺の喉のもっと奥で高揚するものがある。

こんな可愛い麻痺は初めてだ。
汗の量も尋常ではない。
タマの頬を触れて確かめてみる……このまま、腕の中で看取りたい。

父さんは新しい菓子をタマの口に運び入れる。

唇はどんな振動なのか、毒による唾液はどのくらいの粘度なのか……知りたいという好奇心に、
父さんの『食べろ』と言う合図……。




「……千秋ひゃまぁっ…………」

考えることを放棄してしまった。
無意識に、唇を重ねてしまうなんて事はあるらしい。

父さんは俺が解毒剤を持っている事を知っていた。

オブラートに包んである解毒剤をタマの舌に飲み込ませる……タマを簡単に殺させやしない。


毒の痺れか、タマを抱き上げ部屋を出てく時、このまま窓にでも飛び込もうかなんて思った。


「この私を欺いたわね?」

扉を出ると千花が眉を吊り上げた形相で、睨み付けている。


「……モモを呼んでくれ」

父さんに差し出され窶れた螢にタマを預けた。

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