《MUMEI》

授業も出るだけでろくに受けず、


届きもしない努力を毎日繰り返す。


それでもいいと思って動いていたが、


『昼ごはんがない』


そんな小さなことで一気にやる気が失せた。


いや、


ホントはやる気が無くなったわけじゃない。


ひどく落ち込んだだけ。


疲れてる体に、


嫌なことがちょっとだけ重なって、


そうしたら、


周りにある全てのことが、


辛く感じられた…


「何凹んだ顔してんだよ?」


「いや…、


昼飯売り切れてたから…」


「お前そんなんで凹みすぎだよ!!」


(違う…


ホントはそれだけじゃない。


何で…


何で誰もわかってくれないかな…)


「椎名くん。」


「ん…?」


酷い顔の椎名に、


誰かが話しかける。


「これ食べる?」


購買のパンを差し出すクラスメート。


「…いいの千秋?」


「うん。


今日買いすぎたから。」


「マジで!?


ありがと!!」


「いいよ。


気にしないで。」


自然体の笑顔でパンを差し出すクラスメート。


比野千秋。


彼の笑顔に、


少し癒された椎名だった。

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