《MUMEI》

「…」


「…なに?」


口をもぐもぐ動かしながら、


椎名は千秋の顔をじっと見ていた。


「なに?」


「…千秋さ、」


「うん。」


「ハンドボールやんない?」


「…?


なに突然?」


「ハンド部入ってくんない?


俺と、


ハンドボールやろうぜ。」


「あはは!!


俺運動できないよ!!」


「できなくね〜って!!


俺が教えるから!!」


「ホントに言ってんの?」


「ホントにホント。」


「…」


「絶対おもしろいって!!


それは俺が保証する!!」


「…」


スポーツ。


それは運動音痴の千秋にとって遠い存在だった。


しかし、


やりたいという気持ちはあった。


踏み出す勇気がなかった。


バカにされるんじゃないだろうか?


上手く出来ないんじゃないだろうか?


不安はいくつもあった。


「俺…


ハンドボールのルールとか知らないよ?」


「俺が全部教えてやるよ!!


どんな小さなルールだっていい!!


わかんないことも、


出来ないことも、


全部俺が教えるから!!」


「…」


少し考える千秋。


そして、


「…いいよ。」


答えを出した。


「マジで!?


絶対だぞ!?」


「うん。」


ようやく、


新しい仲間を見つけた瞬間だった。

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