《MUMEI》
夫婦は仲むつまじく
人間界の上空、と言っても死鬼が車を飛ばした位置から真上の空中にその夫婦はいた。

「あらあら〜あの子ったら人様のモノを投げちゃって…仕方ないわねぇ…」

「うんうん。やっとあいつも少しは神らしく力を使うようになったなぁ。まあ…使い方はアレだがな。」

のんびりとした口調の方が"慈悲の女神"の生喪である。
青く長い髪をストレートに伸ばし、両手首に銀色のリングをつけ、どことなく神としての威厳があるものの、
何故か服装は水色のワンピースに紺のミニスカートというような完全な私服で服からは微塵も神というような雰囲気は無かった。

その隣で満足げに納得している方が"暴神"のタハキで、
こちらは赤い髪が全て後ろで雑多にまとめられていて、
右手と左手の甲にそれぞれ黒い炎と赤い雫のイレズミが入っていた。
こちらも服装は黒の半袖に紺のジーンズという神と言うよりそこらを歩いていてもおかしくない。

ただおかしいといえば───2人とも足を地に付けず、空中に浮いていることだろうか。

2人とも完全に人間界に同化していた。
こんな2人でも立派な一児の親である。

「それにしても、それにしてもだ…アイツの力…何だか不安定すぎないか?」

「それはやっぱり私達が力の使い方を教えてないからじゃ…」

「おお!さすが我妻!全然な自分と違い頭の回転が速いな!!」

「そんなこと…無いですわ、アナタの行動力には私も惚れ惚れしますもの。」

「おお…生喪!!」

「はい?」

「やはりお前は俺にはない何かを持っているな…そういう所を含めて俺は…お前のことを好いているぞ!!」

恥ずかしげもなく出した言葉であっても、生喪は嘘偽りなど何処にもないことを理解していた。だからこそ、生喪は白い肌を薄く朱に染めながら優しく微笑んだ。

しばらくタハキと生喪はほほえみあっていたが、生喪が静寂を破りながら切り出した。

「やっぱり…あの子に会って話すべきよねぇ…親は生きていることとか…」

「その親は神で季紫は実は神の子だってこととかな?」

その張本人が自分達なのだがまるで他に要ると言わんばかりに話し合う2人、それでも───それでも2人の季紫を見る目は暖かさに溢れた親の瞳だった。



そして2人は決めていたことをゆっくりと口にした。

「それじゃあ」

「ええ」

「「"会いに行きますか。"」」

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