《MUMEI》
「これ!!!」
「―――――
全く…、裕斗の奴簡単に捨てすぎ…」
「隆志!」
隆志に詰め寄りシャツを捲る。
「―――なに………」
名刺大の湿ったガーゼが背中に貼られていて…、
「な、ガーゼ交えてくんね?シャワー、上手く避けきれなかった」
「―――――」
隆志はクローゼットを開け、紙袋を出してきた。
「――この前行った産婦人科………」
見慣れた名前の医院名が印刷された紙袋。
「ハハ…、そうなんだ、だから裕斗場馴れしてたのか…」
「――裕斗?」
「あ、うん…」
▽
袋からガーゼとテープを出して、背中のガーゼを剥がす。
そこには2センチ程度の縫い込んだ皮膚があった。
「な、なに?これ…」
「あ、いや…、ちょっとドジってさ…、
なんか、べつにたいしたことねーんだ、
ただ血だけ大袈裟に出てびっくりしてさ、
それで裕斗にその産婦人科に連れてって貰ったっつーか…」
「――――」
きっちり縫ってあって…
「深さは?」
「たいしたことないって、ちょっとひっくり返った時切っちゃっただけで…」
「何で切ったの?」
「え?あ、カッター…」
…クラクラする
「―――何処で…」
キモチがワルイ
「惇んち…、
――ゴメン、ちょっと汚したかも……」
――――吐きそ………
……
「ぅ……!」
慌てて流しに行き水を出す。
「ゴホッ!ゴホッ!
あっ、はあ!」
「大丈夫か!おい!」
俺の背中を擦る手…
―――それは何故か
酷く遠くに感じる。
「惇!!」
――ふと意識が遠のき…
……
「惇!!」
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