《MUMEI》

「これ!!!」


「―――――
全く…、裕斗の奴簡単に捨てすぎ…」



「隆志!」




隆志に詰め寄りシャツを捲る。



「―――なに………」



名刺大の湿ったガーゼが背中に貼られていて…、




「な、ガーゼ交えてくんね?シャワー、上手く避けきれなかった」



「―――――」



隆志はクローゼットを開け、紙袋を出してきた。



「――この前行った産婦人科………」




見慣れた名前の医院名が印刷された紙袋。



「ハハ…、そうなんだ、だから裕斗場馴れしてたのか…」



「――裕斗?」



「あ、うん…」




袋からガーゼとテープを出して、背中のガーゼを剥がす。




そこには2センチ程度の縫い込んだ皮膚があった。


「な、なに?これ…」



「あ、いや…、ちょっとドジってさ…、
なんか、べつにたいしたことねーんだ、
ただ血だけ大袈裟に出てびっくりしてさ、
それで裕斗にその産婦人科に連れてって貰ったっつーか…」


「――――」




きっちり縫ってあって…



「深さは?」



「たいしたことないって、ちょっとひっくり返った時切っちゃっただけで…」


「何で切ったの?」



「え?あ、カッター…」






…クラクラする




「―――何処で…」



キモチがワルイ




「惇んち…、
――ゴメン、ちょっと汚したかも……」






――――吐きそ………



……




「ぅ……!」





慌てて流しに行き水を出す。




「ゴホッ!ゴホッ!
あっ、はあ!」




「大丈夫か!おい!」




俺の背中を擦る手…





―――それは何故か



酷く遠くに感じる。




「惇!!」






――ふと意識が遠のき…



……




「惇!!」

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