《MUMEI》
仏の顔も三度(俊彦視点)
一回目を済ませた時点で俺は心が広くなっていた。


一応、壱子のおかげで蝶子はここにいるわけだし、俺だって、俺達の愛の結晶の子供達が可愛くないわけではない。


ただ、それよりも、蝶子が好きなだけなのだ。


(まぁ、一回位は許してやろう)


そんな気持ちで、蝶子が華江さんの携帯に電話するのを許した。


「もしもし、華江さん? 子供達、もう寝た?」


そんな蝶子の声に子供達が気付いたらしく、歓声が聞こえた。


「じゃあ、今度は信彦に替わってくれる?」


(…『今度』?)


俺は裸のまま、ガウンを着ている蝶子に近付いた。


「ちょ、俊彦!」

「もしもし、信彦、今度って何だ?」

《なんでトシが出るんだよ、さいしょが友にいとはなえおばちゃんで、つぎがいちこちゃんで、さっきがやすひこだから、今はおれがママと…》


最初、次、さっき、…今。

つまり、


「ママからの連絡は今が四回目なんだな!?」

《いいからママとかわれよ!》

「お前こそ、華江さんに替われ!」

「と、俊彦!」


俺は、慌てる蝶子を無視して華江さんを呼び出した。

そして、帰るまでもう連絡しないと伝えて電源を切った。

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