《MUMEI》
成功(俊彦視点)
(よし!気付いてない!)


俺はシャワーを浴びながらガッツポーズをしていた。

昔と同じで蝶子は日本酒を飲んだ後の記憶が全く無かった。


蝶子が冷蔵庫を開けないように、正方形の冷蔵庫を回転させて、壁側に扉を向けておいたし


昨夜飲んだワンカップのビンの入ったゴミ箱は、ベッド下に隠しておいた。


「何か…体、だるいのよね」


適当に入ったファミレスのモーニングを食べながら、蝶子はしきりに首を傾げていた。


「昨日、いつもしない事したからね」


バックはした事はあるが、ああやって後ろから抱えるのは、ベッドが激しく揺れるから、滅多にしなかった。


だから、嘘はついていない。


「そっか…そう、よね…」

蝶子も、赤くなりながら、納得していた。


「今日は合宿最終日だし、通し稽古ばかりらしいから、ずっと一緒にいられるし、やっと帰れるね」


俺が話題を変えて、笑顔を向けると蝶子も笑顔で頷いた。


そして、俺は、お疲れさまな蝶子をいたわりながら、意気揚々と、吾妻高校にタクシーで戻ってきた。


晴れやかな俺を見て、一番ホッとしていたのは柊だった。

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