《MUMEI》
待望(俊彦視点)
合宿から一ヶ月後。


「…来ないの?」

「うん。まだ、わからないけど…」

「調べようよ!」

「でも、ただ遅れてるだけかも…」

「それはそれで大変だから! 明日休みだし、行こう!」


俺は、その日は蝶子を抱かずに、大興奮の夜を過ごした。


そして…


「先生! どうですか!?」

翌日、俺は


産婦人科医に詰め寄っていた。


普段なら、お盆の後に生理が来るはずの蝶子が、九月半ばを過ぎてもまだ来なかったのだ。


(これは、もしかすると、もしかするぞ)


心当たりはありまくりだった。


「…先生?」


俺の隣に座っている蝶子が顔を上げて医者を見つめた。


「おめでとうございます。
丁度一ヶ月です」

「やった〜!」


俺は蝶子を強く抱きしめ、医者に怒られた。


「まだ一ヶ月ですから、本当に小さな命ですからね」
「先生、女の子ですよね!」

「まだわかりません」

「蝶子似ですよね!」

「…わかりません」

「す、すみません、先生! 帰りましょう、俊彦」


蝶子が真っ赤になって俺を止めた。


「…くれぐれも、ストレスを溜めないように」


何故か医者は憐れみの目を蝶子に向けた。

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