《MUMEI》
とりあえず秘密
妊娠は嬉しいが、まだ一ヶ月だし、安定するまで周りには秘密にしたかった。


「じゃあ、仕事も続けるの?」

「他の子の時もしてたし」

実際、私は、五ヶ月位までは、『クローバー』で働いていた。


俊彦は嫌がったが、ジッとしているのも良くないと医者も言っていたし、幸い私はつわりもひどくなかった。


「でもでも! 今回はひどいかもしれないよ」

「そうなったら、ちゃんと言うから」

「でもでも!」

「ちゃんと、大事にするから…ね?」


私は、お腹を擦りながら俊彦を見つめた。


「う…ん。まぁ、ちゃんと、するなら…」


俊彦も、私の手の上からお腹を擦った。


「絶対女の子がいいなあ、蝶子似の、可愛い子」

「私はどっちでもいいけど…

もし、女の子なら、また私が決めてもいい?」


壱子の名前は私が、信彦と康彦の名前は俊彦が決めていた。


「いいよ! 名前もう決めてあるんだ?」


俊彦の言葉に、私は頷いた。


「教えてよ」

「女の子が生まれたらね」
「それまで秘密?」

「とりあえず」


私は微笑んだ。

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