《MUMEI》 特別デザート「祐也、元気?」 「元気だよ、食べれないだけで、病気じゃないし」 俺は、病室に入ってきた志貴に笑顔を向けた。 大さんの提案を受け入れた俺は、学校帰りの志貴から勉強を教わる事になっていた。 「随分元気になったわよね」 「おかげさまで」 「相変わらず細いけど」 「それは、体質だよ」 俺と志貴は、顔を見合わせて笑った。 「ところで、ちゃんと呼び出してくれた?」 「もちろん。ただ、ヘタレだから、病院内徘徊してる。 …痴呆老人みたいだった」 プッ! 俺は、志貴のノートに目を通しながら、吹き出した。 (あれだけ、人の心にズカズカ踏み込んでおいて、しかも、勝手に動いといて何やってんだか…) 「すぐバレるわよねぇ、これは…」 「バレなかったら、俺が馬鹿だろ」 「祐也は馬鹿じゃないわよ」 志貴は、俺のテーブルに残った今日の昼食に付いていたデザートを、もう一度見つめた。 「こんなの、普通病院で出ないし」 それは、かなり凝った見た目のさつまいものモンブランだった。 初日のゼリーはともかく、徐々に豪華になるデザートは、間違いなくあいつが作ったものだった。 前へ |次へ |
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