《MUMEI》
進化
「僕ももっと速く走れたらなぁ…」

彼はバイクを撫でながら呟いた。

「結構走れてると思うよ」

「そんな事ないですよ。全然乗りこなせてないですから」

「今のスーパースポーツに乗りこなす方が無理じゃない?」

「ですかねぇ…」

「サーキットじゃないからね。
この峠で乗りこなせるのは、良くて125CCまでじゃない?」

「いやぁ、でも、このZXR400乗りこなしてるじゃないですか!」

「全然!乗りこなせたらこんな物じゃないよ(笑)
確かにタイヤの進化でバイクの性能を発揮出来る様になったけどね」

「やっぱりタイヤは良くなりましたよねぇ?」

「なったね。
当時のタイヤじゃあ今のツーリング用以下じゃないかな?」


当時、バイクの性能はどんどん上がってた割にタイヤが追い付いてなく、バイク、腕よりタイヤが先に限界を超える状況だった。


「そう言えば、今のタイヤはほとんど滑る 事ないですよね」

「だから、簡単にフルバンクさせられるやろ?」

「それが…
バンクは出来るけどアクセル開けれないんですよ(笑)
開けるとアンダーでちゃって…」

「そう…
じゃあ、フルバンクまで寝かせられてないんじゃない?」

「やっぱりそうですかねぇ…」

「多分ね。
フルバンクでアクセル開けると、路面に張り付く様にグリップするからね。
アンダーが出ると言うことは、フルバンク出来てない証拠やからね」

「はい…」

もう一つ殻を破れると、もっと楽しくなるよ(笑)
でも、無理しない様にね。」

「はい(笑)
練習します」

「じゃあ、俺は帰るよ。今日は邪魔が入ったからね」

「ありがとうございました。
また教えてくださいね(笑)」

「じゃあ」

そう言って自宅に向かった。

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