《MUMEI》

「僕も新井田さんみたいになれますか?」

明石君は純粋な瞳で尋ねてくる。


「ええ、きっと千秋さんが好きならね?」

明石君は恋した乙女みたいに照れながら頷いた。




勢いよく扉が開く。

「……居た!
明石、大丈夫か?何もされなかった?」

螢君は明石君を迎えに来た。彼とは千石様の誕生日の度に会っているので私は彼にすっかり要注意人物に指定されている。

まあ、こちらも彼に何もしてないとは言い切れ無いのですが……。


「新井田さん有り難うございます!」

螢君に引かれながら明石君は出ていく。



「……千秋さん嬉しいでしょう?」

保健室内のカーテンを引いているベッドに千秋さんは居た。
体調が優れないので千秋さんは明石君をお使いに行かせている隙に休んでいたのである。


「……明石君を大事に思うなら毒を飲むなんて馬鹿な真似はしないで下さいね。親子なんですから話し合えばいいでしょう?」


「……タマは俺のものだ」

千秋さんは冷たい口調になる。


「……まだ、忘れられないのですね。」

ふと、千秋さんが幼い頃を思い出してしまった。

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