《MUMEI》

いつもよりも少なめのメニューとなったが、


練習をこなした。


練習後、


クロと翔太は試合のことを話していた。


「キーパーは恭介で決まりだろ。


これで4人。


問題はポストと右サイドとエース45か…。


ヤマ…は無理だろうな。


たかが練習試合に来るわけね〜し…」


「あの、クロさん?」


「ん?」


「本気でやるんすか?」


「当たり前じゃん。


もう約束しちゃったし。」


「俺…


できないかも…」


「何で?」


「ホントは、


最初クロさんがコーチ引き受けるの反対だったんすよ。」


「…?」


「あいつらはハンドボールができることに満足してて、


それなのにクロさんが教えるなんてもったいないって。」


「うん。」


「でも、


今はあいつら変わったし、


そう考えたら、


あいつらからまたハンドボールを奪うことは俺にはできないす。」


「…僕もあいつらからハンドボールを奪いたくなんてないよ。


ただ、


もし僕のやり方が間違っているのなら、


猪狩とやって上にいけるなら、


それはそれでいいと思う。」


「…?」


「猪狩は勝ちにストイックだ。


あいつがキャプテンになったら勝つ為のチームを作るんじゃない?」


「…それはそうかもしんないすけど、」


「けど…」


「…?」


「僕のやり方は間違ってないはず。」


「…」


「最強の選手がいたって、


チームは勝てない。」


「え?」


「ホントに強いチームは、


最強のチームじゃない。


最高のチームだ。


僕はそれを、


試合で証明してもらう。」


「…わかりました。」


翔太は思い出していた。


自分がヤマトからチームを引き継いだ時に言われた言葉。


『最高のチームにしろよ』


クロとヤマト。


やはり通じる物があり、


そしてそれを伝える為に、


試合に望むのだと、


翔太は理解した。

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