《MUMEI》
観客席についた周哉と昇が暇つぶしに雑談をしていると、
「あ、いたいた」
「先行っちゃうなら声かけてよ」
春と奈々がきた。
「ごめん」
「近寄れなくてさ」
「なんで?」
春が聞いてきたが、周哉と昇は答えられない。
でも奈々は理由がわかっていた様で、
「春ちゃん、私たちの後ろに二中の男子がいたんだよ」とフォローしてくれた。
「そっかー、二中の人って怖いもんね」
春は本当の理由に気付いていなかったようである。
その後も雑談をしている内に周哉は、
(この三人には再婚のこと言った方がいいかな)と思った。
「あのさ」
「ん、何?」
「実は、俺の父さんさ、再婚する事になったんだ」
「え、マジで!?」
「マジで」
「そっかー、もう一年も経つんだね」
春が少し遠い目をして言う。
「じゃあお祝いしなきゃ」と奈々も言った。
「後でジュースおごってやるよ、一本だけ」
昇の言葉に
「せこっ!!」
思わずつっこむ周哉。
「あ、始まるみたいだよ」
奈々がそう言うと、試合開始のホイッスルが鳴った。
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