《MUMEI》

がらんどうな学校は寒気立つ静けさだ。

樹は身震いをした。

再度メールを確認して、外靴から持って来た新品の靴に履き変える。




永の闇のような冥さを窓から漏れる月光が照らした。


樹は僅かに咳込んだ。
臭いがする、嗅ぎ覚えがあるその生臭さ、鉄の臭いだった。



月に照らされ真っ直ぐ続く光、廊下の奥に染められた影。

影の形の立体である違和感に、突き当たりの角に踞る…………




「アラタ……?」
口に出してしまっていた。




アラタは膝を抱えたまま踞っていた。眼球が樹の声で反応したことに安堵し、近付いて行く。

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