《MUMEI》
本音
「今の電話…、平山さんかな……――裕斗かも……」





「―――いいから、喋んなくていーから…」






隆志は俺の額からタオルを取り、そしてそれを裏返す。






ヒンヤリ冷やされたタオルが心地よい…。




でもまだ目の前が映りの悪いテレビみたいだ。



「何も食ってねーのにあんだけ胃酸吐いたんだから…、ちょっと落ち着いたら水分取ろうな…」


「――――うん…」



久しぶりに貧血。




始めは真っ暗だったから段々良くなってきてる…、

試しに右手に力を入れると、軽く握りしめる事が出来た。


「隆志……」



「ムリすんな、話は後で…」


「大丈夫、したい……」


「―――」


「――――」




隆志はまた俺からタオルを剥がし、そして今度はキンキンに冷えたタオルが額に触れてきた。



――だいぶ意識がはっきりしてきた…




視界がだいぶ鮮明になってきた。




俺はタオルを片手で押さえ、隆志の方に躰を横に向けた。


「――兄貴だろ、それ……背中…」




「は?何…言って…」


「俺の部屋にはカッターはない…、―――
つか、怖くて…、
持ってない…」


「――――」

「――――」


「ごめん…ね?」


「―――」


「俺なんかに…関わったばっかりに……ごめんね?ごめんね?」


視界がまたぼやけだした。


今度は涙でだけど…


タオルで目を覆い隠す。


胸が苦しい。


「ごめ……」



俺の背中に隆志の大きな手が柔らかくあたってきて、そして擦られだした。




「謝んなよ、惇が謝る事じゃねーよ」

「でも……」


「――――いーから、もう……」

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