《MUMEI》 合宿へ行こう5月になった。 海南高校に破れた市民体ももう1ヶ月前の話。 そして高総体が迫っていた。 どの高校も高総体に向け練習を行う中、 赤高は目標が違った。 高総体よりも前に、 勝たなければならない試合を控えていた。 クロが約束した猪狩との試合。 赤高の選手たちの意識は、 明らかにそっちに向けられていた。 「日高ペース落ちてんぞ〜。」 「はい!!」 「返事ばっかじゃなくちゃんとやれよ〜。 沖ぃ〜。 顔上げろ〜。」 「はい!!」 「1年声出せ〜。」 「はい!!」 目標に向け、 練習に熱の入る赤高。 やはり意識が違った。 いつもと変わらないのは、 クロだけだった。 「…」 いや、変わらないわけではない。 色々と考えはあったが、 表情や態度に出さなかっただけだ。 「安本さん?」 「ん?」 「今週末からG・Wじゃないすか?」 「うん。」 「合宿とかしたいんすけどダメすか?」 「ん… ん〜…」 「…ダメすか?」 「部費がな… テーピングと両面テープに飛んでいくからな…」 「あ〜…」 ハンドボールは、 指にテーピングを巻き、 その上からさらに両面テープを張って行うのだ。 ※プロの場合は松ヤニ。 毎日の消耗品となるテーピングと両面テープ。 ハンド部の部費は毎年これでほとんど消えていた。 「…」 (…要するに金のかかんない方法を探さなくちゃなんないわけか。) 前へ |次へ |
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