《MUMEI》

「馬鹿って言うな……悲しいのか?」

こういうとき、いつもなら撫でてやったりしたが抵抗してしまった。


「ばかはばかあ……、全部だ!悔しくて怒りたくて哀しくて寂しいんだ!悔怒哀寂だ!」

七生、ブドアイジャクってなんだよ……


「間違っているよ。馬鹿は七生に返還する……」


「……ん?」

七生は首を傾げながら悩み始めた。


「喜怒哀楽だよ。」

七生の悩みはそれで治まった。


「そうそれ!」

清々しい笑顔になる。そのいっぱいの笑顔が幸せにする。


「…………七生はカッコイイから、俺よりもっと素敵なお姫様が現れるよ。」

俺みたいなのよりずっといい人が居るよ……


「こだわるね、『お姫様』っていうのに。
シャコージレーじゃん。二郎に言う言葉が真実だよ、そんなにお姫様がいいならいつでもしてあげるよ?」

七生の口から社交辞令が出た衝撃と手の甲の中指骨に、贈呈された『お姫様チュー』にくらくらした。


「……せいぜい七生は馬鹿殿だよ…………」


「ちこうよれ……」

馬鹿殿が指の間を一舐めする。変な痺れが来た。


「…………ッ」

唇を噛み締める。

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