《MUMEI》
一同騒然
七生の息遣いが近くに感じる。


「キスはしないから、抱きしめさせて……二郎の体温が、匂いが欲しい。」

七生……、その言い方はかなり扇情的だ。


「いいんだ、二郎が嫌なら。触らないよ?
俺は傍に居れれば……そりゃあ、男の子だもん、たまにはガツーンてするけど、何より……二郎と離れたくないと思うから。」

顎に噛み付いたとは思えない大人発言……。


「……頭打った?」

言葉はあまのじゃくなことばかり言ってしまう。
人差し指と親指で七生の袖を摘む。一応、許可の合図のつもり。


「二郎がこんなに怖がりなのは辛い思いしたからなんだな?」

潰れそうなくらい目一杯だきしめられた。
擬音つけると“むぎゅう”だろうか。


「……ななお」

お前のその、あったかいのが擽ったくて心地良い。


「――――――決めた。
俺、二郎を愛しまくるから!愛して愛して愛しまくるから。」

“むぎゅう”が“べきべき”になった。
海老反りみたいに背骨が曲がってしまう。


「ななお、いたいのは……」

七生は痛くて苦しくて、粗暴で馬鹿……


「……キス……したい。」

耳元に七生の甘い声がかかる。
言ってるそばから我慢できないのか。




「目、閉じて?」

仕方ないな…………。

七生と一緒に目を閉じて、屈んだ七生の頬を擦り当てた。
これ……一応、欧米ではキスだもんね。

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