《MUMEI》
一日の終わり
通りを歩きながら看板の宿代に注目して歩く。この辺りでは一泊3100E)が相場のようだが、今はそれほどお金を持っていないのでできる限り安い宿を探して行くと一つの看板が目に付く
〔宿屋、玉華  一泊2500E〕
少し古い感じの宿だが明かりはついているし何より安いので中へと入って行く。受付にはタバコを片手に雑誌を読む親父、年は40代くらいだろうか。
「宿泊希望者かい?」
店主がこちらに気づき声をかける。狩月は頷き
「はい、空き部屋ありますか?」
あぁと頷き金額を提示する店主。
「まぁゆっくり休みな。うちの宿はなかなか趣があっていい感じだろう。」
自分の店を自慢し鍵を渡してくれた。
「その身なりってことは、冒険者かい?」
今日からですけど・・と答え苦笑する狩月にあっはっはと豪快に笑い、部屋は二階だぞと案内する。
二階にある部屋へ向かい荷物を置き窓の外を眺める。空には相変わらず薄い蒼月が浮かんでいた。
宿に来るまでに買った品物を並べていく。琴の前ではわくわくしていると言っていたものの異世界での生活であり、エデンのように安全が保障されているわけではない・・不安な思いを抱えながら黙々と整理していく。そんなときにコンコンとノックの音が響く。
「明かりもつけないで、落ち込んでたのかい?」
笑いながらも気遣うように言い、こっちに来いと手招きをする。店主に続き一階へと降り食堂へと向かう。
食堂には数人の客がわいわい騒ぎながら食事を取っている。
「飯食ってないんだろ?宿代に入ってっから食いな。やっぱり腹が空いたままじゃ悲しい考えばっか浮かぶもんだしな。酒は・・まだ早いか。」
かっかっかと笑い簡単な料理を並べていく。
食事を始めると親父は色々聞いてきたり自分の若いころの話などをしてくれた。
また話してるよと常連らしい客がからかい店主が笑い飛ばす。そんな光景に笑みをこぼしながら食事を続ける。食べ始めて気が付いたが昼から何も食べていなかったことを思い出す。
「やっぱ腹減ってたんだな。どうだ?俺の作った飯もなかなかイケルだろ。ちゃんと食わねぇとダメだぞ。」
どんどん食べていく狩月に満足そうに笑いかけおかわりはいらねぇか?と尋ねてくる。いただきますそう答え、食事を続ける。随分お腹がすいていたようだった。
「ご馳走様でした。おいしかったです。」
そう言って席を立とうとする狩月に、
「ちょっと待ちな、あんた今日、冒険者になったんだったらしばらくはこの街に居るんだろ?どうだ、ここで1泊だけじゃなくしばらく宿とっていかねぇか?割引してやるぞ。」
声をかけ一泊これくらいでどうだ?と金額を示す。
「宿でくらいゆっくりしたいなら慣れた宿のほうがいいぞ〜まぁ無理にとは言わないけどな。」
示された金額はこの辺りの中ではかなり安く2000E。今の手持ちでも10日は泊まることができる金額なので、
「そうですね・・5日間くらい泊めてください。お金は先払いかな?」
そういって財布を取り出そうとする狩月に
「金は余裕のあるときで構わねえよ。最初のころは色々金使うだろう?」
そう言って奥へといってしまう。ありがとう。そう小さく呟き部屋へ向かう狩月。
部屋に戻って荷物をしまい、ベットに横になるとすぐに睡魔に襲われた・・

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