《MUMEI》 一階から緩やかな螺旋階段で二階へ昇る。 薄暗い廊下になっていた。 奥の部屋に着くと氷室さんは扉を開けてくれた。 「……新井田百枝……。」 「私の名前を……?」 扉の先は何も分からない。 「自分のモノの名前は覚える。」 不意に力強く、背中を押された。 「……え?」 扉に吸い込まれたかと思った。扉の先に床が無い。 足がガクンと落ちた後の浮遊感、そして扉から見下す氷室さんの瞳……体の機能が停止してしまう。 真っ逆さまに沈んで行く。 ダプン 水? 口の中に大量のアルコールが入って来た。 プールじゃない、 酒だ………… 眩暈と、息苦しさがする。 前へ |次へ |
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