《MUMEI》
葉月さんの説明
俺と忍は、旦那様の最期の気持ちがわからなかった。

だから、美緒さんの言葉に、俺は美緒さんと共に春日さんの病室に向かい、忍ははそんな俺を止めなかった。


病室の前の廊下で、葉月さんが待っていた。


「落ち着いて、聞いてくれよ」


俺が深く頷くと、葉月さんが説明を始めた。


ベッドから転落し、骨折した春日さんは、診療所にいる時は寝たきり状態だった。


春日さんはそのまま死んでもいいと思っていた。


しかし、春日さんを慕う人々はそれを望むはずもなく、春日さんはリハビリ設備の整ったこの病院に転院した。


そして、周囲の献身的なサポートで、入院前に近い状態まで回復した。


「ここまでは、君も知ってるんだよね?」


俺はまた深く頷いた。


「回復したから、退院じゃ、…無いんですか?」


俺の質問に、葉月さんは首を…


小さく横に振った。


「ここに入院した時に、一応精密検査も受けてもらったんだ。

キヨさんの体に…

悪性の腫瘍が見つかった

キヨさんは高齢だから、もう手術は受けられない。

キヨさんと皆で話し合って… 最期は、生まれた土地で、過ごす事にしたんだよ」

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