《MUMEI》
励まし
「大丈夫だよ、祐也」

「何がだよ」


俺は春日さんを睨んだ。


結局無理矢理、春日さんは俺に封筒を押し付けたのだ。


「ちゃんとそこに、生きるヒント書いてやったし、お前にはちゃんと、あたしのようにお節介な友人ができるよ。

あ、もういるか」

「そんなの、今だけだ」


俺は、旦那様を亡くした時から永遠を信じられなくなっていた。


志貴も祐も、ずっと俺の側にはいないだろうと思っていた。


「今だけにするかは、お前次第だよ」

「頑張ってもどうしようもない事だってある」


現に春日さんの夫は死んでしまったし


俺の旦那様も死んでしまった。


「そうだね。だけど、残る物もあるかもしれないよ」

「春日さんだけだ」


あんなにたくさんの人に愛されるのは。


「わからないよ。お前はまだ十六だろ?」

「まだ、十五だ」


俺は三月生まれだと、聞かされていた。


「じゃあ、もっとわからないよ。
諦めるのは、まだ早い」


春日さんは俺の手を握った。


しわだらけだけど、温かい手だった。


「何か目指すものがあるみたいだし、頑張りな、祐也」


顔を上げると、春日さんのしわくちゃな笑顔があった

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