《MUMEI》

「どうだ、見下ろされ踏みにじられるのは?」

ベッドに腰を下ろしたまま仰向けに落ちた私を踏み台にする。



「……アッ」

下駄で踏まれると足跡が刻まれるようだ。
私の脚は枷のせいで開くようになっており、身体の中心は晒されている。

「良い眺めだ。婚約者もモモがこんなに囀ることを知らないだろうな?」


「何故……そのことを?」

私には婚約者が居る。


「口を開けば疑問ばかり、単純なことだ。お前は私のモノなのだから把握しているだけのこと。」

踏む力が増した。


「……嫌だあッ」


「違うだろ、主人への言葉遣いには気をつけろ……父とはほぼ別居で学べなかったのか?」


「それは……」

父と別居状態だったのを知るのは限られた人しか居なかった筈だ。


「知っているさ。
小学生の頃に家政婦に強姦されたことを家へ戻らない父親に打ち明けれずにいた。女性恐怖症で独身を貫きたかったが父が勝手に婚約者を決め、その婚約者は……」


「――――っ止めて……!」

聞きたく無かった、誰かの口から自分の秘密を。



「……“下さい” だ。」

見上げる彼は深淵で、底の無い恐怖だ。





「…………止めて下さい、千石様……。」

従えば、思い出さずに済むと錯覚した。

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