《MUMEI》 中々落ちない。 突然、後ろの人に水に切り替えられた。 「水じゃなきゃ血液は落ちませんよ。」 「あ……安西?!」 黒いスーツを着ている安西が鏡に映りこむ。 「先輩も呼ばれてたんですね。俺は瞳子の従兄弟なんです。」 それは初耳だ。 「全然スーツ着てるから気付かなかった。大人っぽいね。」 元から身長もある安西は、俺よりも着こなしている。 「褒めても何も出ませんよ?」 さりげなく、安西は血を落とすのを加勢してくれた。 「あ、本当によく落ちる。」 安西は汚れを落とすのを手慣れていた。 「エアタオルで乾きませんかね?」 安西はスーツの濡れた部分を手を乾かす風に当てている。 動きが機敏だ……。 「有難う安西。良い婿になるね。」 「……どうですかねぇ?はい、乾きましたよ。少し跡が残ってますけど。」 シワを手で伸ばしてくれた。 「ううん、まあ……最悪弁償だけど、仕方ない。七生も一緒なんだよ、そうだ。朗読してるかも!」 「そうなんですかー、俺はこういう華々しい場所苦手みたいで………………このまま二人でフけちゃいませんか?」 冗談にしては難しい使い方をする。 「早く戻ろうよ!」 安西の手を引っ張る。 前へ |次へ |
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