《MUMEI》

「僕は…」
言葉を失ってしまった。


買えば良い〜家にあるから いらない、そう思っていた。


煎餅もそうだった。稚麻の気持ちも、考えずに…。


「稚麻、ごめん。僕は…」


「に〜ちゃ!あ〜煎餅。」
稚麻は、慌ててポケットに手を突っ込んだ。

「はい、に〜ちゃ!」出した右手の中には、粉々の煎餅…穴に落ちて割れたらしい。


「あう…」
慌てて左手を出す、やはり粉々の煎餅…(笑)


僕は、稚麻の右手に〜口を近付けて、粉々の煎餅を食べた。


その煎餅は、今まで食べた煎餅より〜優しい味がした。


稚麻も、嬉しそうに左手の粉々の煎餅を食べた。口の周りを粉だらけにして…。


僕は笑った。涙を流しながら…。

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