《MUMEI》
教会・・
最初に向かったのは街の中心である、中央公園。公園には少し早い昼食を食べている者や、遊具で遊んでいる親子連れ、世間話に華を咲かせている主婦らしき人たち・・
光景としては、エデンでも見られるが、様々な人種が居ることで狩月の目にはとても新鮮に見える。
露天商たちは少しでも商品を売ろうと声を上げ、それに足を止め眺める人・・公園は騒がしくだが、和やかに・・ゆっくりと時が流れていく。
知らず知らずに頬が緩み笑顔になって、公園内を散策して行く。ざっと一回りして公園の中央、獅子の紋章の描かれた旗の下で地図を展開し、次に何処へ行くのかを考え、琴が行くことは無いだろうな。そう言った南側、フィリアス教会を見に行くことへ決めた。守護騎士を見たいそう思ったのも理由である。そう決断すると南へ歩き始める。
フィリアス教の第二聖地そう呼ばれている聖殿は、壮麗、荘厳、優雅・・・様々な表現がこの教会の為にあるのではないだろうか、そう思われるような建物がそこには確かな清浄さを持って佇んでいた。聖殿へ入ることは特殊な行事でもない限り禁じられている。聖殿の隣には、一般礼拝用の教会も建っている。一般用の教会とはいえきっちりとした、威厳を持っている。狩月は中へは入らず外から二つの建物を見ていた。
「昔から嫌いなんだよな〜教会って・・」
ぼんやりとそんなことを呟く。だが、狩月はそのある種の威圧感を含んだ空気を好んでいた。
十数分そうしてぼんやりと眺めていただろうか・・
「何故それほど、この愚かな建造物を眺める?」
すっと、違和感を纏い一人の人物が現れる。全身を漆黒のローブで纏い、顔もフードによって良く見えない。そして、あまりにも存在感が無く、だが大きな違和感をその身に漂わせている。突然出現したその人物に驚き、呆然としている狩月に対し、
「くっくっく・・我が何者か解らぬ故の不安・・いや、警戒か・・それほど警戒せずとも我はそなたに害をなすつもりは無い。ただの好奇心・・そう、それ故に声を掛けたまで。」
声量は低いが良く通る声でそう告げる。
「そう・・ですか。」
なんとかそう返す狩月、その返答に満足したのかしないのか・・
「ほぅ・・我と会話をする気があるようだな。くっくっく・・ならば答えてはくれないか。何故そなたはこの無意味で無価値な建造物を眺める?」
微かにフードを上げ目を向けてくる。好奇に輝かせたその瞳を・・指は教会を示している。
「何故・・か、解らない、ただこの空気が好きなだけです。身を引き締められるような、そんなこの空気が。」
「解らない、か・・ではもう一つ、そなたの言う空気はこの場よりも建造物の中のほうが強いのではないか?強すぎるが故に近づく事ができぬ訳ではあるまい?愚かな宗教家には見えぬしな。」
「宗教家じゃないからこそ、中には入りたくない・・そう思います。中は確かに俺が好む空気があるとは思うけど・・でも何か違う、そんな気がするから・・」
言葉を探すようにゆっくりと答え、やがてどんどん困った顔になっていく。説明しづらい、顔にはそう書かれているかのようだ。

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