《MUMEI》
状況説明
残された副長は、呆然と羽田と凜を眺めていた。

「……あー。つまり、その、どういうことなんだ?」

副長は額に手をあて、考えるように口を開いた。

「あいつには、君が見えていないようだったが……?」

指された凜は「ですね」と頷く。
しかし、頷いただけでそれ以上は何も言わない。
副長はその難しい表情をした顔を羽田に向けた。
状況を説明しろと、その目が言っている。
 羽田は凜を見たが、彼女は肩をすくめるだけで説明する気はないようだ。
仕方なく、羽田は自分たちがこの世界の人間ではないこと、普通は自分たちの姿がこの世界の人間には見えないことを副長に説明した。
 説明を聞き終えた副長は、さらに混乱した様子で腕を組み、眉間にしわを寄せた。

「じゃ、なんで俺には君たちが見えるんだ? 君だけは他の連中にも見えてるようだし……」

「それは……わかりません」

「わからない?」

「はい。もともと津山さんは見える人には見えてたみたいです。レッカくんのように。でもわたしの場合は津山さんに触れている時か、テラに触れている時にしかこちらの世界は見えませんでした。もちろん、あなたたちからも見えていないはずでした。でも、いつの間にか何を触っていなくてもこちらの世界が見えるようになり、こちらの人から姿が見えるようになったんです」

「……そうなった原因は?」

「わかりません。それを調べるためにここまで来ました」

羽田の言葉に、副長は大きくため息をついた。

「とても信じられんな……」

「ですよねぇ。わたしもです」

羽田はしみじみと言って頷いた。

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