《MUMEI》
姫扱い
『挨拶はきちんとしておいて損はないよ。それに、挨拶は普通だから』


「おはよう」


俺は、自転車置き場で会った同級生に自分から挨拶した。


「お、おはよう」


今までは、人から言われてから挨拶していたから、同級生は驚いていた。


それから、下駄箱でも同じ事をした。


(そういえば、ラブレターの返事してないなあ)


普通に上履きだけ入っている下駄箱を見つめながら改めて思った。


(それに、何だか周りが静かだな)


俺は普通に素顔をさらしていたが、別に周りも普通だった。


二年生が今日から修学旅行でいないから、祐が寄ってくる事もなく、俺は無事に教室にたどり着いた。


「おはよう」

「おはよう、祐也」×4


俺に近寄ってきたのは、いつものサッカー部の三人組と志貴だった。


他の同級生達は、俺を見て安心したように笑ったが、それだけだった。


(何か…妙な感じだな)


「安心してね、祐也」


首を傾げる俺に志貴が言った。


「祐也はデリケートで、あんまり近付いたり騒いだりすると、また倒れちゃうからって注意しておいたから、皆に」


…志貴が言った皆とは、全校生徒の事だった。

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