《MUMEI》
残夢
昔、調べ物の為に父の書斎を漁っていた。

『――――お父さん、これ、いつの写真ですか?』

本の間に挟まっていたのだ。


『……捨て置け』

それは、今もはっきりと覚えている。
父が豹変し、怒られたのだと思った。

後で書斎を覗いていると父のぽつりと漏らした言葉で怒りで無かったのだと子供ながらに感じた。



確か……確か、

   『“  ”』

千石様も、言っていた。








「………………は、はあ 」

夢だ……
引っ掛かる夢だった。


「モモだ。モモ。」

千石様の息子さんが居た。


「ちあき。」


「そう、千秋さん。」

千秋さんは窓を開く。
そよ風が髪を煽る。


「空気を入れ換えろって言ってた。モモは俺の家庭教師になるんだ。」

千秋さんが私の膝に乗っかった。
此処はいつもの薄明かりの地下部屋じゃ無い。


「千石様の命令でお前は家庭教師になったのだ。」

いつの間にか藤間さんが居た。


「だってさ。
モモ、髪伸びたな、肩まである……。」

千秋さんは私の髪を引っ張る。

地下の環境は私に合わなかったらしい、確実に私の體を蝕んでいたのは事実だ。

御飯も粥や野菜しか口に出来ず、千石様に会う前はプレッシャーで吐いていた。

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