《MUMEI》

クロがバイトに向かった後、


勉強会が開かれていた。


さっきのことを気にしてるのか、


どこか暗いムードが漂っていた。


「…」


皆静かだ。


勉強に集中しているわけではないのだが…


ガラッ…


安本が教室から出る。


マネージャーたちの迎えのためだ。


「ふぅ〜。」


「疲れるわ。」


「宿題多すぎ!!」


とたんに私語が始まる。


「さっきのクロさん怖かったな〜。」


「ね!!


普段優しい分キレると怖いのな。」


「お前らなぁ〜、


クロさん怒らすんじゃね〜よ!!」


翔太も私語に参加する。


「すいません…


でもマジ怖いすね…」


「あれはでもお前らが悪い。」


「まぁそうすけど…」


「前にクロさんが言ってた。」


「?


「人間当たり前のことなんて1つしかない。


目が見えることも、


歩けることも、


しゃべれることも当たり前じゃない。


それができない人もいっぱいいるんだから。


当たり前のことってのは、


生まれたら死ぬ。


ただそれだけなんだって。」


「…」


「ビックリだよな?


あの人高校の時からこんな考え方してたんだぞ?


どんだけ大人なんだよって思ったわ。」


「…確かにそうすね。」


「…やっぱクロさんすげ〜わ。」


宿題は全くはかどらなかったが、


今日彼らは教科書に書いてることなんかよりもずっと貴重なことを、


勉強した。


「翔太さん?」


「ん?」


「練習付き合ってもらっていいすか?」


「…もち。」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫