《MUMEI》

と、その時、電話が入った。

「もしもし…」
「大悟だけど!」
「なんだ…」
俺はコーヒーを淹れっぱなしだったので、飲みながら電話をする。

「実は俺な…あの声聞こえていたんだ」

あの声というのは幽霊の女の事だろう。

「だってあの時聞こえてないって!」
「そりゃあ、俺だって最初は空耳だと思ったぜ。だけど、違ってた…俺にも届いてた」

大悟まで聞こえていたなんて…よっぽどあの女の子は許せなかったんだ。

「今何してたんだ?」
「え!翔が帰ったっきりだけど」
「デートしてたのか…お前ら本当仲いいな!」

嫉妬でもしてるんだろうか?

「俺が言いたかったのはそれだけ!じゃあな!」

そして、俺は受話器を切った。
やはり下半身が疼いている。このままでは…

「く…ハァ…」
俺は再びベッドに行き、自分の秘部を触る。

「ん…あぁ…」
音を立てながら自慰をする事は実に気持ちいい…

俺は次の瞬間、高い声をあげた。多分、一番感じやすい所を触ったからだ。

「ん…ハァ…ハァ!あ!くっ…」

そして、白濁液を流し、イった。
「…情けない…俺は…女がいるのに…」

俺は自慰をした後、激しいフラッシュバックに襲われる。

「…!昔の事が…!駄目…入って来る…!」

強烈な頭痛に、俺は頭がかち割れるんじゃないかと思うぐらい、苦しい。

「…翔は…守ってみせる…!」


その数日後。

大悟の家へ行った。
「…どうしたんだ?」
「ちょっと…嫌な事思い出しちゃって」
「ふーん。まぁ、上がれや」

そして、俺は靴を脱ぐ。

「で?俺にどうして欲しいのかな?」
「…大悟は、あの日の事覚えているの?」
「へ?」
「親父と…会った日」

俺は真剣に話す。
ソファーに座りながら。
「そうだな…少しぐらいなら」

「俺は…あいつを守る資格はあるよな?」
突然の問いかけに、大悟は驚いた。

「あぁ!だって、愛してるんだろ?」
「…うん」

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