《MUMEI》

「お母さん…」


「運動会どうだったの?」


「1番だよ。


かけっこも、リレーも。


全部1番だよ。」


「そう。


凄いわね。


小太郎は。」


「うん。」


「…」


「…」


「…小太郎。」


「なに?」


「お母さんね。


もうすぐ死んじゃうの。」


「え…


お母さん何言ってんの…?」


「小太郎には難しいかもしれないけどね?


本当のことなの。」


「うっ…


嘘だよ!!


お母さんの嘘つき!!」


「小太郎ちゃんと聞いて。」


「嫌だよ!!


聞きたくないよ!!」


「小太郎。


あのね?


これは当たり前のことなの。」


「うっ…


うっ…」


「人は皆いつ死ぬかわからないの。


皆が皆おじいちゃんやおばあちゃんになるわけじゃないのよ。


いい?


人は皆いつか死んでしまうの。


でもね?
それは当たり前のことなの。


人が死ぬのは当たり前。


だからお母さんはちっとも怖くないわ。」


「そんなの…」


「あのね?


お母さんは幸せなのよ?」


「…どうして?」


「うふふ。


それはね?」














『あなたが生まれてきたからよ。』

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